Lesson3-1 日本酒の「旬」

日本酒の旬

冷蔵設備を備え、1年じゅう日本酒を造る四季醸造の蔵もありますが、日本酒造りは、一般的には、10月から3月の寒い時期に本番を迎えます。
それに合わせて出荷される日本酒の種類も変わってきます。ここでは月ごとに日本酒造りの流れや出荷される日本酒の種類についてみていきます。

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10月:
酒造りスタート。

11月末~12月:
年内に収穫したお米を基に作り、この時期に出荷される酒を「新酒」と呼びます。「しぼりたて」「初しぼり」などと記載される場合もあり、特有の新鮮な香りと爽やかな苦味、キレのよい飲み口が特徴です。

12月~3月:
この酒造りの時期には、フレッシュな酒が色々と楽しめます。
醪を搾るときに最初の方に出てくる酒を「あらばしり」といいますが、これを楽しめるのもこの時期ならではです。新酒と同じくキレのある飲み口で、特有の華やかな香りが特徴です。

3月~5月:
この時期の限定品として薄くにごった日本酒も多く出荷されます。醪を粗い布でこした状態で商品化されるものを「にごり酒」「うすにごり酒」「滓がらみ」などと呼びます。瓶の中でまだ酵素が生きていて、口に含むと弾ける微炭酸を含むものもあり、近年ではこのタイプが人気です。

6月~8月:
酒造りが終わり、この時期にかけて出荷されるのが夏酒、冷やして飲んでおいしい酒です。フレッシュ感が求められることもあり、火入れの工程を省略した「生酒」「生貯蔵酒」「生詰酒」などが多く出回ります。
夏には凍らせた日本酒である「凍結酒」も出回ります。多くは、火入れを行わない生酒を凍らせ、ちょっと溶けてきたみぞれ状のものを楽しみます。凍結酒には、劣化が起きにくいというメリットもあります。

9月:
日本酒は冬から春にかけて造られ、その後9月くらいまでの間、蔵の中で貯蔵されます。熟成によって味がまろやかになり、円熟した味わいを楽しむことができます。こうした、貯蔵済みの秋の訪れとともに出荷する日本酒を「ひやおろし」や「秋あがり」と呼びます。

 

季節の行事とともに日本酒を楽しむ

日本には季節行事があり、行事に合わせて服装や食べ物をセレクトし、季節の変化を尊ぶ文化がありますが、日本酒にも節句やハレの日に合わせたものがあります。

1月
新年を祝って「祝い酒」を楽しみ、「お屠蘇(おとそ)」を飲んで1年の健康を祈願します。

2月
「雪見酒」をいう降り積もった雪を眺めながら日本酒をたしなみます。

3月
桃の節句。昔は桃の花びらを浮かべた「桃花酒(とうかしゅ)」を飲む習慣がありましたが、江戸時代以降はもち米やみりんなどを材料としてつくられた濃厚で甘味の強い「白酒」に変わりました。

4月
桜の咲くころには「花見酒」が飲まれました。農村では桜の木を田んぼの神様が宿るとして、日本酒を供え、その年の五穀豊穣を祈願していました。これが、現在の「花見」の由来だといわれます。

5月
端午の節句に合わせて飲むのが「菖蒲酒」です。文字通り菖蒲の葉や根を浸したもので、あやめ酒ともいわれます。

9月
9日の重陽の節句には、邪気を払い、不老長寿の効果があるとされた「菊酒(菊の花を浮かべたもの)」を飲む習慣が平安時代からありました。

10月
中秋の名月を眺めながら日本酒を酌み交わす「月見酒」は今でもしばしば行われてるなじみの深い行事です。日本では平安時代から、月を愛でながら酒を楽しみ和歌を詠むという習慣があったといわれます。

日本酒は、季節行事に欠かせないものであり、昔から日本人の生活の中で親しまれてきたのです。