Lesson2-2 日本酒ができるまで②

では、基本的な工程について詳しくみていきましょう。

①精米

雑味の原因となる玄米の外側の糠(ぬか)部分を削る作業です。このときどれくらい削っているかを表す数値のことを精米歩合と呼びます。私たちが普段食べている白米は、精米歩合90%程度ですが、酒造りに使われる米はそれよりもさらに深く削ります。
米の表面はタンパク質やビタミン、脂質などの成分を多く含み、これらは酵母の栄養となって発酵を促進したり酒の旨みのもとになりますが、多すぎると雑味のもととなってしまうためです。

精米歩合と間違いやすい表現に精白率という表現があります。
精米歩合が残った部分の割合を示すのに対し、精白率は削り取った部分の割合を表します。
つまり、精米歩合が60%と精白率40%は同じ意味を表します。

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精米歩合によって日本酒の味わいや香りが大きく変わる

精米歩合によって日本酒は3つに分類されます。

・精米歩合70%以下・・・本醸造酒
・精米歩合60%以下・・・吟醸酒
・精米歩合50%以下・・・大吟醸酒

また前述のように、米は最表層部になるほどタンパク質や脂質が多いため、精米歩合の高い米(低精白米)で作った酒は、旨みの多い濃醇な味わいに、精米歩合の低い米(高精白米)で作った酒は淡麗ですっきりした味わいになるといわれます。

精米直後の米は、最長1ヶ月間程度袋に詰めた状態で保管されます。精米時、摩擦熱などで水分が飛んでしまった米に一定期間吸湿させて水分含有量を整えるためで、浸漬の際に急速に水を吸うのを防いだり、水につけたときに米が割れにくくなります。
この工程を「枯らし」といい、日本酒造りの重要な工程の一つです。

②洗米・浸漬

枯らし後、残った糠などを洗い流すために米を洗い(洗米)、一定時間水に浸けて吸水させます(浸漬)。

この工程で、米にどれくらい吸水させるのかが重要です。
吸水率は米の品種や精米歩合によって異なり、精米歩合が低い米ほど精米中の水分蒸発量が多くなるため、水を吸いやすくなります。米の状態や目標とする吸水率に応じて、秒単位での調整が行われます。

③蒸米

蒸し米は製麹・酒母造り・醪仕込みという酒造りの3本柱すべてに使用されるため、その出来によって酒の品質の良し悪しが大きく左右されてしまいます。前工程の洗米・浸漬作業と同様に酒造りの主要な工程の一つです。

私たちが食べる米は「炊く」のが一般的ですが、日本酒の場合には吸水させた米を(こしき)という大型せいろと釜で「蒸す」という作業を行います。職人は、蒸し米を手に取り、粘り気や水分の状態を確認しながら時間や温度を調整しています。

炊くのではなく蒸すのには、次のような理由があります。

1、米のデンプン質を適度にα化(糊化)して、糖化しやすい状態にする
2、米を完全に殺菌するための加熱処理
3、蒸し米の理想である「外硬内軟」の状態にするため

「α化」と「外硬内軟」

では、この2つのキーワードをもとに蒸米の作業について、もう少し詳しく学習していきましょう。

α化とは、米のデンプンがやわらかく粘り気のある状態になることです。
米を原料にアルコールを作り出すためにはまず、麹の酵素によって米を糖化させなければいけません。α化した米は酵素が中まで浸透しやすいため糖化が速くなり、酒母や醪の仕込みがスムーズに行えるのです。

ほどよくα化した蒸し米を作るためには、高温の強い蒸気で米を一気に蒸しあげることが必要です。通常米を蒸しあげるまでには、40分~1時間かかり、蒸し終わった米は麹用・酒母用・醪用に分け、それぞれ適温まで冷ましてから使用します。

最近ではベルトコンベア方式で蒸しから冷ましまでを行う全自動蒸し器が使用されることもありますが、手作業で蒸した方が良い仕上がりになると、昔ながらの甑を使う手法を守る蔵も多くあります。特に、吟醸酒などの高級酒用の蒸し米だけは手作業という場合も多いようです。

また、蒸し米の理想は「外硬内軟」。外はさらさらで硬く、米同士がパラパラとしてくっつかないようにし、中心部は柔らかく水分が保たれている状態になっているものが良い蒸し米といわれます。

麹を作る際、内側に水分があり柔らかければ、麹菌が菌糸を米の内部までしっかりと伸ばすことができます。さらに、外側が適度に乾燥し米同士がばらけていれば、麹菌が各粒均等に繁殖しやすくなります。

そのためには、

①時間をかけて原型のまま精米すること
②吸水率をしっかりと合わせること
③乾燥した高温の強い蒸気で均等に蒸すこと    

が重要です。