Lesson2-1 日本酒ができるまで①

酒の種類と製造方法

酒は製造法から醸造酒蒸留酒混成酒の3つに分類されます。

醸造酒と蒸留酒は原料をアルコール発酵させて造ります。アルコール発酵とは、微生物の酵母がブドウ糖などの糖分を食べて分解することでエネルギーを得る過程で、炭酸ガスとアルコールを出す反応でお酒ができる基本的な原理です。

原材料を混ぜ合わせて仕込んだものを醪(もろみ)といいます。醸造酒も蒸留酒も醪を作る段階までは同じですが、醸造酒は醪をそのまま絞るのに対して、蒸留酒は、熱を加えてアルコールを蒸発させた後、湯気になったアルコールを集めて再び冷まして液体にするので、純度の高いあるアルコールになります。
日本酒を蒸留したものが米焼酎、ワインを蒸留したものがブランデー、ビールを蒸留したものがウイスキーです。

混成酒は既成の酒に糖分・アルコール・果実・香味料などを加えたもので、日本の梅酒やヨーロッパのリキュールなどがそれにあたります。

世界中の醸造酒の中でも、日本酒は特に複雑で高度な醸造方法をとります。同じ醸造酒のワインやビールと醸造の基本を比べてみましょう。

ワインは原料となるブドウにもともと糖分が豊富に含まれているので、複雑な工程を経なくても発酵が進みます。一方でビールは原料となる大麦を発芽させた麦芽の酵素の働きで糖化させ、これに酵母を加えることでアルコール発酵させます。糖化と発酵を個別に行うため、単行複発酵と呼ばれます。

これに対して日本酒は、ワインと同様に原料の米にはデンプンが含まれていますが糖分が含まれていないため、ビールの原料となる大麦と同様に発酵させて糖化する必要があります。しかし、大麦のように原料自身がもっている酵素を用いるのではなく、麹菌を増殖させ、その酵素によってデンプンを糖化させます。

ビールでは糖化と発酵をそれぞれ別のタンクでおこないますが、日本酒の場合は1つのタンクのなかで糖化と発酵が同時に進む点が大きく異なり、並行複発酵と呼ばれる醸造技術を用います。この方法をとる醸造酒は世界でも数少ないといわれます。

日本酒造りの流れ

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日本酒造りは「一麹(いちこうじ)、二酛(にもと)、三造り(さんつくり)」といわれます。
酒造りの重要な手順はまず麹造り、次に酛(酒母)づくり、そして醪を仕込む「造り」ということです。基本的な工程は以下です。

①精米:米の表面のタンパク質や脂質を取り除く
②洗米・浸漬:米についている不要な糠を落とし、米に水を吸わせる
③蒸米:米を蒸して麹菌の繁殖をしやすくしたり、醪の中で溶けやすくする
④麹造り:蒸米に種麹を振りかけ、麹菌を繁殖させる
⑤酛造り:麹と蒸米と水、酵母をいれて酒母(酛)を造る
⑥醪づくり(仕込み):酒母に麹、蒸米、水を加えて醪を造り、発酵させる
⑦搾り:ほどよく発酵した状態の醪を搾って酒を取り出す
⑧ろ過・火入れ:搾った酒をろ過し、酵母と酵素の活性を止めるため、加熱する。
⑨貯蔵・瓶詰:貯蔵し熟成させ、味を整える。

次の章では、上記の工程を詳しく学習していきます。