地酒ブーム
1940年(昭和15年)に生まれた「日本酒階級制度」により、酒を特級・一級・二級と等級に分ける級別制度を取っていましたが、大量生産される酒に反発し、あえて審査を受けない蔵もありました。そういった各地の蔵は、級別審査を受ける必要のない二級酒として純米酒や本醸造酒などを売り出していたのですが、1967年に雑誌『酒』で新潟・石本酒造の「越乃寒梅」が紹介され、全国の人々に認知されるようになりました。それをきっかけに各地の優れた地酒が次々と紹介されるようになりました。こうして1970年から1980年代にかけて地酒ブームが起こります。
新潟の「越乃寒梅」や宮城の「一ノ蔵」「浦霞」などの淡麗辛口の酒がブームになる一方で、山形の「十四代」や福島の「純米生酛」など米の旨みやコクのある芳醇旨口の酒も注目を集めるなど日本酒の多様化が進みました。
現在の日本酒市場
現在、日本酒の消費量は、
世界から注目される日本酒
海外への日本酒輸出量も、この10年間でほぼ2倍に伸びており、
ジェトロ(日本貿易振興機構)が2012年に海外7か国の日本料理店の顧客に対して行ったアンケートでは、7割が「日本酒を飲んだことがある」と回答し、そのうち「非常に高く評価する」「やや高く評価する」という回答が8割にのぼりました。このことからも日本酒が世界で認知されてきているとともに、日本酒が世界から高い評価を受けていることが分かります。
クールジャパン推進の一環として一つとして日本酒や焼酎などのメイド・イン・ジャパンのお酒を海外に売り込もうという施策が取られていたり、2013年に「和食 日本人の伝統的な食文化」がユネスコの無形文化遺産に登録され、和食との関連性が深い日本酒の需要が高まっていたりと、今後も日本酒の輸出量は増えていくと予想されます。
若手蔵元の台頭と日本酒の多様化
近年、30代から40代の若手蔵元が注目されています。2010年、秋田県内の新政酒造、山本合名会社、栗林酒造店、福禄寿酒造、秋田醸造の5蔵が「NEXT5」という有志会を立ち上げ、2016年までで計7本の共同醸造酒を発表しました。
従来企業秘密とされてきた酒造りにおいて、情報を共有し共同で酒造りを行うという試みは、日本酒時代の新しい流れとして注目を集めています。
また、日本酒の味わいの多角化も進んでいます。
昨今人気の日本酒のキーワードは「甘酸」「ドメーヌ化」「低アルコール」です。
甘味と酸味のバランスがよい甘酸タイプの酒は、白ワインの味わいにも似ています。この甘酸タイプの酒は若い層や女性の人気も獲得し、「日本酒はオヤジの飲み物」というイメージは過去のものとなりつつあります。またこのタイプの酒は、甘いだけでなく酸味もあるので「食中酒」に向いているといわれていて、近年食中酒として楽しむ日本酒が続々と発売されています。
ワイングラスで日本酒を楽しむスタイルが誕生したり、日本酒専用のバーやバル形式のお店も増えており、日本酒の楽しみ方も多角化しています。
地域性を重視した酒造りも近年の潮流の一つです。近年の分業化により、米を他から仕入れて酒造りを行うという蔵が多かったのですが、それでは本当の意味での「地酒」ではないという考えから、地元産の酒米を自営田で育て、蔵内で精米するという蔵が増えてきました。こうした米作りから一貫して行うことを「ドメーヌ化」と言います。
ワインのアルコール度数は10~14度、ビールが4~5度なのに対し、日本酒のアルコール度数は割水をして出荷される状態でも15~18度と、昨今酎ハイやビールを飲みなれた層にとっては、アルコール度数が高めで敬遠されがちでした。
そうしたイメージを払拭するためか、日本酒のアルコール度数は近年少しずつ下がる傾向にあります。中には日本酒を炭酸で割った商品なども登場し、日本酒初心者も気軽に試せるようになってきています。
消費者の好みに応じて日本酒の種類は多様化しているといえます。