日本酒のラベルには、銘柄名や品種名のほかに、「生酛」や「無濾過」など様々な表示が一緒に記載されていますが、それらの多くは、第2章で扱った製造工程名がそのまま名称として使われています。
この章では、これまでのおさらいも兼ねて日本酒の名称について整理するとともに、それらの意味を理解し味を想像できるようになりましょう。
日本酒の名前一覧

あらばしり
搾りの最初に取れる部分。華やかな香りと少し荒っぽさを残すフレッシュ感が味わえる
中汲み・中取り
醪を搾る際、あらばしりの次に抽出した部分の酒。バランスの良い香味とされる
滓がらみ
搾りの後に残る沈殿物である「滓」を取り除いていないもの。米の旨み成分の多い味わいが特徴
無ろ過
滓引き後に残った滓などを除去するためのろ過を行わない日本酒。ろ過したものよりも、香味の要素が多いため、山吹色の色調が特徴となる。
生一本(きいっぽん)
一つの製造場だけで醸造した純米酒。
江戸時代初期に粗悪な酒が出回るのを防ぐ目的で生まれた名称
木桶仕込み
醪の発酵をタンクではなく、昔ながらの木桶で行ったもの
生酛
酒母を造る際、自然界から乳酸菌を取り込んで作る手法で仕込んだ酒。濃厚な旨みと酸があり、本格的な味わいになる
山廃
生酛で造られた酒のうち、酒母を造る際、蒸し米と麹、水をすりつぶす「山卸し」を省略して仕込んだ酒
速醸酛
酒母を造る際に醸造乳酸を加えたもの。淡麗な酒質になりやすい
金賞受賞酒
酒類総合研究所が主催する「全国新酒鑑評会」において金賞を受賞した酒
原酒
加水調整を行っていない酒。アルコール度数が18~20度と高く、粘性の高いものが多い
古酒

「長期熟成酒」とも呼ばれる。搾り後から出荷まで数年経っている酒。寝かせることで味が熟成して美味しくなる
ひやおろし・秋あがり
春先に出来上がった日本酒を半年ほど熟成させ出荷する酒。熟成により飲み口がまろやかに変化しているのが特徴
しぼりたて(新酒)
出来たばかりの日本酒。若々しくピリリとした心地よい刺激のあるものが多い
樽酒
木製の樽で貯蔵された酒。杉の木樽が最高とされ、爽やかな香りが特徴。
斗瓶囲い
搾りの際、醪を詰めた袋を吊り下げ、そこから滴り落ちた液だけを斗瓶という容器に集め貯蔵したもの。「袋吊り」「雫酒」と同じ意味で使われる場合も
槽しぼり
「槽」と呼ばれる伝統的な搾り機で搾った酒。機械搾りよりも時間はかかるが、高品質の酒になるとされる
生酒
火入れを行わない日本酒。特有のフレッシュ感や軽快さが特徴。「本生」や「生生」と表示されることもある
生貯蔵酒
貯蔵時の火入れは行わず、瓶詰め前の火入れだけを行ったもの。生酒の風味を残したものが多い
生詰め酒
生貯蔵酒とは逆に、貯蔵前の火入れのみを行ったもの。ひやおろしに良く用いられる手法
にごり酒
醪を目の粗い布でこしただけのもの。白くにごっているのが特徴で、醪の濃厚な香りや味わいが楽しめる。女性からも人気の高いタイプ
発泡酒・発砲清酒
スパークリングタイプと呼ばれる近年人気のジャンル。シャンパンのような爽やかな飲み心地が味わえる
本醸造酒
原料が米、米麹、規定内の醸造アルコール、精米歩合が70%以下の場合に名乗れる特定名称
吟醸酒
原料が米、米麹、規定内の醸造アルコール、精米歩合が60%以下の場合に名乗れる特定名称
大吟醸酒
原料が米、米麹、規定内の醸造アルコール、精米歩合が50%以下の場合に名乗れる特定名称
純米酒
原料が米、米麹のみの場合に名乗れる特定名称
純米吟醸酒
原料が米、米麹、精米歩合が60%以下の場合に名乗れる特定名称
純米大吟醸酒
原料が米、米麹、精米歩合が50%以下の場合に名乗れる特定名称
普通酒
特定名称酒の規定外の日本酒を指す。たとえ原料が米と麹だけであっても、その他の基準を満たさないものは普通酒に分類される