Lesson6-1 日本酒と健康

お酒の飲みすぎは二日酔いのほか、アルコール依存症や臓器障害など健康を損ねる原因となりますが、一方で適量の摂取は健康増進につながるといわれています。
厚生労働省による「21世紀における国民健康づくり運動」では「節度ある適度な飲酒」の量は、純アルコールに換算して1日約20グラムとされています。

この量は日本酒なら1~1.5合、ビールなら中瓶1.5~大瓶1本ほどにあたり、この適量を守って、お酒を飲んている人は、全く飲まない人や飲みすぎている人に比べて、心臓病やがん、糖尿病、肝硬変などを発症するリスクが低いことが医学的に証明されています。

ほかにも、適度な飲酒はストレス解消や食欲増進のほか、最近では骨粗鬆症の予防と改善効果や認知症・健忘症の予防効果があることなども医学的に証明されるようになってきました。

 Nishihama/shutterstock.com

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日本酒の効用

日本酒には、原料の米や麹菌・酵母から作り出された、糖質・アミノ酸・有機酸・ビタミン・ミネラルなど120種類以上の成分が含まれています。これらが独特の風味を醸し出すとともに様々な病気の予防や改善効果を生み出しているのです。
では、日本酒の効用について具体的に見ていきましょう。

①アミノ酸が豊富に含まれている

アミノ酸は、私たちの身体のタンパク質を構成したり、骨格筋を保持する役割があるほか、疲労回復や食欲増進にも役立ちます。日本酒にはこのアミノ酸がバランスよく豊富に含まれていて、近年では日本酒のみに含まれるアミノ酸や糖類が心臓病やがん、骨粗鬆症、老化、認知症などの発症リスクを低下させることも明らかになっています

②発がん予防効果

1966年から16年間にわたり、国立がんセンター研究所が行った調査によれば、適量のお酒を飲む人のがん死亡率が低下するといことが明らかになっています。

また、日本酒を濃縮した試料をつくり、これらを膀胱がん、前立腺がん、子宮がんの細胞に加えるとがん細胞が死滅するという実験結果もあります。これらは日本酒に多く含まれる微量物質が、ヒトのがん細胞の増殖を抑制するためで、ウイスキーやブランデーでは、同じようながん抑制効果は得られません。

③善玉コレステロールを増やす

動脈硬化が進行すると、血管に血のかたまりができて、虚血性心疾患などの様々な病気をもたらします。この動脈硬化は血液中の脂肪の一種であるコレステロール値が多くなることによって促進されます。コレステロールには善玉と悪玉があり、バランスが崩れて悪玉が増えると動脈硬化が起こりやすくなってしまいます。
日本酒には、善玉コレステロールを増やす効果があります。その結果、悪玉コレステロールが増えるのが抑制され、動脈硬化を防ぎ、虚血性心疾患などの様々な病気のリスクを抑制します。

④ストレス解消作用

日本酒に限らず、アルコール全般に言える効果ですが、くつろいで適量のお酒を飲むことは、ストレスによって収縮した血管を拡張させ、血流循環を促します。

これによって、肩こりや筋肉の凝り、冷え性の改善などに役立ちます。

中でも日本酒は、すい臓に働いて消化酵素の分泌を促進させたり、ODDI(オッディ)という筋肉を弛緩させて胆汁排出を促進させたりします。
これにより消化や食欲増進を促してくれます。

⑤体を温める

お酒を飲むと代謝反応によって、熱が生成され体が温まるのですが、とくに日本酒に含まれるアミノ酸には保温効果があり、焼酎やウイスキーなどの蒸留酒よりも長時間長続きします。

飲んで内側から体を温めることもできますが、お風呂にお酒を入れて外側から体を温めることも可能です。酒風呂は血圧の安定を促したり、日本酒に含まれる天然保湿性成分が美肌にも良いとされています。