温度と同じぐらい日本酒の味に影響を与えるのが酒器です。形状や材質の異なる酒器を用いると香りや味わいが大きく変わることがあります。それぞれの酒の特徴に応じて、相性のよい酒器を選ぶことが重要です。

酒器を選ぶ際の5つのポイント
1、酒をどう空気に触れさせるか
まず着目すべきは酒器の口の広さです。口が広いほど空気に触れる面積が大きくなります。酒は酸素に触れると香気成分が活性化して香りが広がりやすくなりますが、同時に酸化速度も早まります。酸化することで口当たりがまろやかになるので、口が広い酒器に注いだ酒は濃厚でまろやかな味わいになる傾向がありますが、一方で、酸化が進みずぎると味が崩れるというデメリットもあります。
2、日本酒の色調と器の材質や色との調和を考える
料理に見た目が重要であるのと同様に、日本酒にも目で味わう要素あり、酒器の材質は見た目にも大きく影響します。黄金色の酒を透明なグラスに注げば、輝きが増したり、にごり酒を色の暗い酒器に注げば、酒の白さとの対比が楽しめたりと、酒器の材質や色調は酒の価値を引き立たせてくれます。
また日本酒の味自体も器の材質によって大きく変化します。ガラス製の酒器は口当たりがなめらかで、酒の味がはっきり感じやすいのが特徴です。一方陶器製の器はどっしりとした重厚感があり、柔らかい飲み口になるのが特徴です。吟醸酒、大吟醸酒のような繊細でシャープな味わいの酒はガラスが、純米酒や山廃のような味の濃い酒は陶器が向いているといえます。
3、日本酒の香りを考える
器の形状は香りの強さと印象を変化させます。香りを閉じ込めるうりざね型や風船型、香りがすっきりと立つラッパ型や円筒形、香りがほとんど感じられない平皿型などがある。
香りの高いタイプの日本酒を飲むときには、うりざね型やラッパ型の酒器を用いるのが最適です。近年はしばしば吟醸酒をワインのように飲みますが、ワイングラスは揮発した香り成分が器の中に充満しやすく、香りと楽しむのに向いています。反対に香りの少ない日本酒はワイングラスに注いでもほとんど変化がないので平皿型を用いるのも良いでしょう。
4、飲用温度でサイズや素材を決める
冷酒は温度が上がらないうちに飲み切れる小ぶりのものや磁器、ガラスを選ぶのが良いでしょう。一方で、熱燗は保温性のある陶器が適しています。
5、開口部の形状に応じて、飲み手の口の形を変える
口の形は平皿型では「エ」、ラッパ型では「ウ」、うりざね型では「オ」になる。この口の形の違いが酒の印象を大きく変えるので、意識してみても面白いでしょう。
4つのタイプに合った酒器は?
熟酒
カットの入ったグラスや内側が金塗りの漆器などで黄金色の美しい色調を楽しみましょう。凝縮感のある香りを生かすなら小ぶりのブランデーグラスも良いです。
醇酒
もっとも日本酒らしい米の旨みが生きた醇酒は、燗にするなら和の器でもある焼き物などで楽しむのがオススメです。辛口の冷酒なら、シャープな陶器製も良いでしょう。
薫酒
最大のポイントは華やかな香りを生かすことです。口が広がったラッパ型の形状かワイングラスのように香りがわずかにこもるタイプが適しています。
爽酒
冷酒にして飲むことが多いので、小さめの盃で温度の上がりにくい素材を選びましょう。清涼感のある装飾で演出するとより一層楽しめそうです。