Lesson5-2 温度を変えて味わう②

美味しいお燗の方法

燗を付けるときに気を付ける最大のポイントは、78℃以下で行うことです。
水の沸点は100℃ですが、アルコールは78℃前後で揮発してしまうため、この温度を超えると香味成分でアルコールが飛んでしまい、酒の味が崩れてしまいます。

燗は酒の風味を豊かにするだけでなく、飲むペースがゆっくりになりやすい、アルコールは温めた方が吸収が早くなるので飲みすぎ防止につながる、などの理由から体に優しい飲み方といえます。
ここでは、おいしい燗のつけ方についてみていきます。

湯煎

1、鍋に湯を沸かす
2、沸騰したら火を止め、湯の量の1割分の差し水をする。
※この時の湯の温度は80℃になるようにする
3、酒を入れた徳利を1分つけて引き上げる
4、30秒後に再び入れて好みの温度で取り出す

他にも、水からつける方法や沸騰した湯につける方法がありますが、水からつける場合には
①ある地点を過ぎると温度上昇が急激に起こるため、時間と温度設定のタイミングが難しい
②数百種類の香り成分はそれぞれ揮発する温度が異なるため、温まっていくあいだに香り成分が次々と抜けてしまうなどの特徴があり、一方で沸騰した湯につけるとアルコールが酒から激しく揮発して、非常に辛口の酒になってしまうので、上記の手順で80℃の湯につける方法が最もおいしく風味がまろやかな熱燗になります。

蒸し燗

1、蒸し器やせいろに徳利を入れ、蓋をして蒸す

湿潤な湯気のなかで加熱するため、アルコールや香りが抜けにくいメリットがありますが、78℃以上の熱が加わるので、やや辛口の熱燗になります。
火を止めると保温することができるので、複数の徳利を温めるのに向いています。

電子レンジ燗

1、徳利にラップをかぶせ、電子レンジにかける

電子レンジのマイクロ波は電波のため、角ばった部分や細い部分に熱が集中する特性があること、急速な加熱が起こるので、徳利内の上下で加熱にムラができてしまうという特徴があります。そこで、首の部分が隠れるようにラップをかぶせたり、空の徳利に移し替えることで温度のムラをなくすと良いでしょう。

近年では、より手軽に燗を楽しめる酒燗器が多数発売されているので、こういったものを利用するのもオススメです。

美味しい冷やの方法

瓶や徳利を氷水につけて冷やす

柔らかく優しい感じを残しつつ、香りと味わいのピントが合った冷え方になり美味しく味わえます。冷蔵庫で冷やすと冷蔵庫内の空気とともに少しずつ冷えていくので少しぼやけた印象になり、一方、冷凍庫で急速に冷やすと瓶表層部の水分が氷点下になり、香りや味がアルコールに取り込まれる現象がおこるため、味わいや香りが閉じこもった印象になってしまうため、氷水につけて冷やす方法が一番おすすめです。

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美味しいその他の飲み方

水割り

グラスに日本酒を注ぎ、好みのミネラルウォーターで割る飲み方です。日本酒:水=8:2の割合で割るのがオススメです。硬水は引き締まった味わいに、軟水はのびやかな味わいが楽しめ、原酒や生酛、山廃系のお酒に向きます。

湯割り

先にグラスに湯を入れた後に日本酒を注ぎます。水割りと同様、8:2の割合がオススメです。硬度の高いミネラルウォーターの湯で割ると魚介類に、軟水では野菜料理に向きます。

ハイボール

氷をたっぷり入れたグラスに日本酒を注ぎ、炭酸水で割ります。柚子やスダチ、カボスなどの柑橘類のスライスを入れることで、爽快感も味わえます。

みぞれ

冷凍温度まで冷やした日本酒を冷たいグラスに注ぐとみぞれ雪のように細かいシャーベット状に凍っていきます。専用の冷蔵庫があるバーなどで楽しむことができます